どん底の鬱を筋肉でねじ伏せた話。の精神科医からの補足

時事問題

精神科医の大塚です。今日ははてなブックマークで話題のどん底の鬱を筋肉でねじ伏せた話を精神科医の視点から補足させていただければと思います。

うつ病の治療の前提として覚えておいてほしいこと

前提として一番大事なことは

  • うつ病の治療の原則はお薬を飲んでしっかり寝ること
  • この記事の内容は一般的な経過に絞っての話、主治医の話が第一

お薬を飲んでしっかり寝ることがうつ病の治療の基本になります。

うつ病になる人は生真面目な人が多いため、周囲の人は寝るのが仕事だからと言って、患者が寝て休むことに対する罪悪感を減らしてあげましょう。

また、主治医の話を第一に治療に臨みましょう。

自分が主婦だとして、他の家の奥さんから家事のやり方にとやかく言われたら嫌だと思います。それと同じで例えばこの記事のようなネット記事を参考に主治医に質問する場合はそういう配慮をしていただいた方が良いと思います。また、今回は一般的な経過に絞って話をするため、非典型的な経過の症例もあるためその点でも主治医の意見をしっかりと聞きましょう。

また、今回はうつ病と仮定して話をさせてください。うつ病以外にも「鬱」を呈することはあります。(躁うつ病や適応障害でも抑うつ状態や抑うつ症状を呈することはある)ただ、この話は専門家以外は気にしなくても良いと思います。

最後に私は駆け出しの精神科医であるため、医学的に間違っていることがありましたらコメント等頂けると幸いです。

今回の経過で一番言いたいこと ~うつ病の急性期に筋トレを勧めないように!~

結論から言うと、うつ病の急性期(≒一番悪いとき)に筋トレを勧めるのは逆にうつ病を悪化させることがあるため注意が必要ということです。

外来を見ていると良かれと思ってやっていることがうつ病の患者の治療を妨げていることがあります。

家でふさぎ込んでいたんで、外の空気を吸わせようと思って飲み会に連れていきました!

気分転換にと思って、旅行に一緒に行ったんですが、それから元気がありません。

元気がないときに一般的には、人と話したり、お酒を少量飲んだり、旅行することでストレスが解消されてよいです。

しかし、うつ病の急性期はエネルギーが全くない状態なので、旅行の疲れがダイレクトに響きますし、アルコールも飲んだ瞬間は良いですが、飲んだ後に来る悲しさ、寂しさみたいなものが余計に鬱を悪くします。精神科の病気において基本的にアルコールはNGです。

今回の匿名ダイアリーを見て、筋トレを一方的に進めるのは気を付けてもらったほうが良いと思います。うつ病が良くなってきて、社会復帰の手前で筋トレ等を勧めるようにしていただけると幸いです!

どん底の鬱を筋肉でねじ伏せた話の文章に沿った細かい補足

本文5行目 精神科医の仕事

>>カウンセリングでもなく、こちらから一方的な話をするだけの診療だった。

エネルギーがない状態では各種生活指導も効果がないためまずはしっかり話を聞くのが精神科医としてのあるべき姿です。自分でもびっくりするのですが、話をするだけでも病状が良くなる人がいます。

先生に話をしただけでも、ごはんが喉を通るようになりました!

もちろん何もしてくれない精神科医だった可能性もありますが、一応補足です。

自分のせいで…と思うよりはあの医者は何にもしてくれない!と思っていた方が精神の健康には良いと思います。

本文23行目 自殺予防

>>そんなある日、首を吊った。紐を部屋のドアノブにかけて、座った状態で吊ろうとした。

一般的には自殺予防で大事とされている時期は、一番重い時期と治りかけの時期です。図で見たほうがわかりやすいので、下の図を見てください。

うつ病は一般的には半年程度で治ると言われています。その中で一番重い時期と治りかけの時期にはしっかりと見守ってあげることが大事だと言われています。

一番重い時期は傍から見ていてもつらそうなので、わかりやすいと思いますが、治りかけの時期は本人も調子がよさそうなので注意が必要です。

治りかけの時期には段々と自分に向いていた自分の関心が周囲に移る時期になり、仕事ができていた昔の自分や、これから仕事を再度しないといけない等の現実的な不安が強まる時期です。なので、この二つの期間においてはしっかりと注意深く支援して頂ければと思います。

本文32行目 金銭的な問題に対する社会的サービス

>>貯金は既に数百円だった。

今回の事例については慢性期だったので難しいかもしれませんが、うつ病になってしまって仕事ができない!という状態であれば、社会的サービス(国からの金銭的な補助)が受けられる可能性が高いです。

・精神的な病気で仕事を休業している場合

傷病手当金を申請できる可能性があります。細かい条件はあるのですが元の給料の6割程度を1年半までを目安にもらうことができます。

・仕事を解雇された場合

雇用保険(失業保険)が受けられる可能性があります。精神科を受診した後勧められることがあり、ハローワーク等で申請することができます。細かい条件は色々あるのですが、概ね3か月程度はもらっていた給料の6割程度がもらえます。

・その他

うつ病は一般的に治る病気であるので難しい可能性もありますが、障害者年金や生活保護等も検討はできます。

大きな精神科の病院には基本的にPSWというサービスの調整を手伝ってくれる人(ざっくりとした説明ですよ)がいるので、主治医にお金の問題が…というと上記の社会的サービスを調整してくれる場合が多いです。もちろん色々な条件から貰えない場合もありますが、まずは相談してみましょう。今回は概略だけ書いているので詳細は病院や市役所等でしっかり確認してくださいね。

本文55行目 筋トレ等社会復帰に向けて

>>ゾッとして、腹筋をしてみようと考えた。

筋トレはやった分だけ筋肉がつくので、成果も見えやすいし、運動機能も上げるため良いと思います。

自分の場合は3か月~半年程度たって、本人の主観として7,8割戻ったときにうつ病の直りかけとして、社会復帰に向けて取り組むこととして下記のことを勧めます。

  • 散歩
  • 家事の手伝い
  • 毎朝決まった時間に起きて朝ドラを見る、図書館に行く

上記のようなことを勧める場合が多いです。

散歩は自然と触れ合うことが多く、ストレス解消になることが多いですし、家事の手伝いは家族の見守りの中で仕事の強度を変えやすいですし、家族も患者が回復している実感を持つことができます。

その上で、仕事復帰に向けて、次のステップとして毎朝決まった時間に起きることを勧めます。ただ起きて、寝ちゃってでは効果が薄いので、毎日やっている朝ドラを見たり、決まった時間に図書館に行くことを勧めます。

毎朝決まった時間に仕事に行くためのリズム作りをするんですね。

まとめ、参考文献

うつ病の治療における一般的な注意点を周囲の関わり方という視点から書かせていただきました。繰り返しになりますが、一般論や一精神科医の意見になりますので主治医の意見を第一に治療に臨んでいただければと思います!

そして、筋トレで鬱をねじ伏せた方にはこれからも無理なく過ごしていただいて、幸せになってもらえれば僕も幸せだなと思います!この記事について嫌だという場合はコメントいただければ承認制のため他の人には見えませんし、対応させていただきます。

何か質問やご指摘ありましたらコメントください!

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